「お客様との涙」
寿退社を迎えようとしている、お客様係りのお話しです。
彼女は、通販部門配属の前には、店頭で接客係りをしていたので、通販でのお電話やご注文書での受注業務には、戸惑うこともあったようでした。
しかし商品に同封するお手紙や、お誕生日カードの提案など些細なサービスひとつでも、とても喜んでくださり、お客様に直接お会いしないからこそ、どうするべきかを考えなければいけないという接客の奥深さを学んだのでした。
そして、たくさんのお客様と出会い関係を深めてきたのです。
そんな彼女も結婚が決まり、寿退社するにあたり一度、直接お客様にお会いしたという思いから、東京の百貨店催事に参加することになりました。
彼女は、今までのお礼にと家で手づくりのクッキーを焼いて、お土産として用意していました。
催事の当日「あのお客様は、お越しくださるかな・・・・」そんな心配とは、うらはらに多数の常連様が、彼女目当てにご来店下さりました。
ご年配の常連様が「あなたに会いに来たのよ。おめでとう。幸せになるのよ・・・・・」
その言葉と同時に、お客様の目には涙が溢れていました。
彼女も気がつくと涙が一杯でした。
百貨店の売り場で抱き合う二人、東京であった一コマです。
そんな彼女が退社前に残してくれた言葉です。
「ずっとお会いしたかったお客様方のお顔を拝見した時は、感激のあまり涙が出てしまったほどでした。
お会い出来なかったお客様も、お電話越しではありますが、たくさんの笑顔に出会えることが出来ました。
お客様係として勤めた間に、たくさんの人の温かさに触れることができ、とても幸せでした。
心の中いっぱいに詰まった思いを財産として、そしていつか私も出会えた温かなお客様のような人になれればと思います。」
「思い出」
彦根城ほとりの夢京橋キャッスルロードにある「せんなり亭伽羅」。
弊社会長が車で通りを走り過ぎようとした時、店の前で佇む年配の女性がおられ、気になって車を止めて声を掛けました。
「この店の者ですが、あいにく本日は定休日でございまして誠に申し訳ござません」
するとその方が「実は、娘との思い出の地を周っておりました。この店に以前、一緒に来たことがあるのです」詳しく聞いてみると、休日には母娘でいろいろな地に旅行にいっておられ、ご来店頂いていたそうです。
そして「せんなり亭伽羅」で食べた“近江牛とろ握り”が美味しくて、娘さんがが「また、せんなり亭伽羅に近江牛のとろ握りを一緒に食べに行こうね」と仰られていたそうです。
「楽しみにしていたのですが、その娘が私より先に亡くなってしまいました」
「ようやく気持ちも落ち着いてきましたので、こうして思い出の地を周っているのです」
なんとかそのお気持ちに応えたくて「ここから車で10分程のところに同じお店があり、そちらは営業をしております。近江牛とろ握りも、ご用意できますので車でご案内させていただきます」と告げて車で店に向かったのです。
お店では、お二人分のお席をご用意し“思い出の近江牛とろ握り”を召し上がって頂くことが出来ました。
私たちの仕事は、お客様の思い出の中に残ることが出来る。
また、お役に立てる仕事だと再認識した出来事でした。